自己決定・自立支援って何? ~敦賀旅行から見えたもの~

老健ここちの郷では、去る5/28に福井県敦賀市への日帰り旅行を実施しました。

きっかけは、ご利用者様の「昔は旅行好きが好きやった。また行ってみたいな。」のひと言。老健の大きな役割は、在宅へ帰っていただくためのリハビリテーションですが、それは単なる機能訓練だけでなく、気持ちや現存の機能でのできることを増やす環境整備、つまり生活全体を整えることであると考えています。生活への前向きな気持ちをキャッチして、形にしていくことが何よりの多職種ケアチームの仕事です。

 

企画の検討は、全職種参加の実行委員会でスタート。その中でも、私達が特に大切にしたことは「自立支援」と「ご家族の参加」でした。旅行に行けばビールも飲みたい、普段なかなか食べられない生ものが食べたい、観光名所も立ち寄りたい、その思いをどう実現させるか、どう自己決定していただくかに心を砕きました。

私達がすべきなのは「選んだような」「決めたような」な自己決定モドキではない「自ら選ぶ」「自ら決める」リアルな自己決定への支援です。普段のケアの中でも、「自己決定」「自立支援」を目標としていますが、旅行などの非日常の場でこそ、そのケアの力が試されます。

 

見よ、このボリューム・・・。絶対に食べたかった極上海鮮丼。

 

また、ご家族様に参加していただくことは在宅へ戻られる際の介護のヒントとなるだけでなく、お気持ちの面でも絆の再構築となると捉えています。

 

当日は、ご利用者様15名、ご家族様2名、職員10名で大型バスを借りて日本海さかな街、日本三大松原の一つ、気比の松原などを観光し、皆様、ご自分で選ばれた物を食べ、観光し、お土産を買われ大いに楽しんで帰って来られました。

 


 

 

バスを貸し切りました。

 

 

みなさん、どれぞれが食べたいものを注文します。

見て下さい。お箸の先を!

 

お土産ももちろん自分で選びます。あげる相手を思い浮かべながら・・・。

 


 

旅行自体は大成功だったと振り返っていたのですが、そこで大きな気付きを与えて下さったのは当日参加されなかったご利用者様でした。「何で私を誘ってくれなかったんや?みんなに声をかけるべきやろ?」と。ご本人様が参加可能かどうかを機能面から判断し、職員が人選を行ったのですが、まさしくそれは「自己決定」の支援ではない。頭をガンと叩かれたような衝撃で、「リアルな自己決定」とは何かを身をもって教えていただきました。

 

その声を聞いて、反省と同時に、むしろ職員の目の色が変わりました。ではどうすればいいか?ご利用者様全員に声を掛け決めていただく、参加者様の状態に応じて柔軟にいくつかのコースを設けるなど、アイデアとそれを実現させる方法がいくつも湧き出て、この経験を次に活かしたい、次はいつ実施しようかと意欲的です。

またこの旅行の準備をする過程でフロア毎の行事の質も大きく変化して来ました。漫然と毎月の行事を繰り返すのではなく、社会参加、在宅復帰への準備としての行事へと大きくシフトチェンジしています。

自分達のケアを向上させる意味を知る、その強い前向きな気持ちが今のここちの郷には溢れています。

 

気比の松原にて、記念写真

 

ここちの郷 副施設長 愛須和美