「施設内留学」という試み

ここちの郷では「施設内留学」と銘打ち、各部門の職員の学び合いを行っている。

 

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きっかけは、通所リハビリテーションの人員不足。非常勤職員が多いため、お子さんの行事や体調不良が重なると、どうしてもシフト調整が難しくなる。

そんな時、入所・通所の各部門リーダー同士、「ちょっと応援に来て!入浴介助の時間だけ!」などと気軽に頼めるのが、ここちの郷の強み。そこで、入所部門の職員が通所の入浴介助のヘルプをしたのだが、これが思わぬケミストリーを生み出した。

 入所部門では、通常、ご利用者様と職員が1:1で入浴介助を行う。尊厳を守り、ご利用者様のペースでゆったりと入浴していただくことにより体調の細かな変化に気付いたり、心の一端を聞かせていただけたりする大切な時間である。それには、専門的、総合的なケア力が必要となってくる。

ヘルプに行った職員は、通常の手順で入浴介助を行ったのだが、それに驚いたのが非常勤職員の面々。「ええ!こんなにスムーズに!」「こんな風に声掛けすればご理解いただけるのか!」などと、職員曰く「目からウロコが落ちた」らしい。

勿論、通所部門の職員も先輩職員から指導を受け、研修などにも参加していたのだが、着脱・入浴と分けて3名でケアを行っていたため、ご利用者様の細かな部分の把握がどうしたらできるのか悩んでいたとのこと。

 まさしく、その答えを目の前で示されて、大げさに言えば「雷に打たれた」ような感覚だったのだろう。今までは「非常勤だから...」と、やや消極的であった彼女たちから「私たちももっと『根拠を持ったケア』ができるようになりたい。」「もっと勉強したい。」「できれば入所の入浴介助を見学させて欲しい。」と意見が寄せられた。

 そこで、始まったのが「施設内留学」である。

通所部門の非常勤職員が1名ずつシフト調整しながら、入所部門の入浴介助見学を行っている。非常勤職員はママさん達が多いので時間のやりくりが大変であるが、その大変さより向上心が上回っているようで「すごく勉強になりました!」と充実感も大きい。この留学での学びが自信となり、日々のケアにも積極的な発言が増えてきた。

また、教える側の職員も「緊張しましたぁ!」と言いながら、事前に自分のスキルを再度振り返ったり、伝えることをまとめたりと、いい刺激になっている。

反対に、施設内ではなかなか見えてこない「在宅」生活をよく知っているのは、通所部門の職員である。「在宅復帰」が老健の最も重要な役割である以上、そのリアルな姿を知ることは何よりの学びとなる。今度は、入所部門の職員が送迎時に付き添うことを検討中である。

 

入所、通所の垣根を越えたしなやかさ、互いに学びあう面白さが、ここちの郷、そして六心会の質を高め、より飛躍できる原動力になると感じている。

 

ここちの郷 副施設長 愛須和美